「私たちは、世界のサンタです。」
ニコラス神父が、ゆっくりとおじぎをすると、
みんなが、「メリークリスマース!!」といいました。
「実は、みんなの希望で、普通のお家のクリスマスパーティを見てみよう!という 事になり、君たちのお家のクリスマスパーティーへうまく招かれることになったん だよ 。ところが、このとおりの人数なので、私以外の皆は、べファーなの魔法で 小さな人形になったんだ。なにせ、我々ときたらクリスマスは一番忙しくてね、ゆ っくりクリスマスパーティーもやったことがないんだよ。初めは、みんながまんし ていたんだが、君たちのお家では、毎年楽しそうなパーティーが開かれていると いうことを、このファザークリスマスが聞いてきて、みんなで行くことになったんだ 。
「ところが、」こんどは、サンタクロースの番です。
「ベファーナのあわて者ったら、元に戻す魔法を考えていなかったんだよ。」
「これはタイヘンダ!!」窓からキントが、ふざけていいました。
「それで、それでどうなるの?」
待ちきれずにお兄さんが聞くと、ニコラス神父が長い杖をトンと鳴らしウホンとせきばらいをして言いました。
「そこで、君たちの出番だったンだよ。」
「え?」二人は、顔を見合わせました。
「サンタを信じている子供が、人形を大事にすること。それは、この私が持ってる 本に書いてあったんだ。『サンタはどんなに困ったことが起きても、サンタを信じる 子供がいる限り問題はちゃーんと解決する』というふうにね。」
「お兄さんは、あまり関心が無かったようだが、お嬢ちゃんは、実によくしてくれた よナア。」
窓からキントがまたまた口をはさんだので、ルチアは、窓をしめながら言いました。
「でも、お兄さんだって、乗り物を探してくれたわ。信じている証拠よ。」
「そうそう、そんな二人が一生懸命に乗り物を探してくれたおかげで、私たちの魔 法が解けたんだよ。」ニコラス神父は、時計を見ながらいいました。
「おおーい、そろそろ用意できたよー。」
外から今度はキントじゃない声がしました。 皆で窓から見てみると、大きなトレーラーや、冷凍トラック、黄色のスポーツカーに金色のゴンドラ船、バイクにスクーター、木馬まであります。呼んでいるのは、マロースでした。
「今、行くよー。」
バレンが、ヒラリと窓から飛び降りました。外は、やっぱり寒いようですが、雪はやんで、お月様がきれいです。サンタ達は、次々と窓から飛び出し、ゆらゆらと浮かぶように降りていきました。
「あ、お兄ちゃんの乗り物だわ!! あたしのスクーターも大きくなっている。」
妹は、窓から身を乗り出しておもちゃではなくなった乗り物を見ていました。
サンタたちは、みんなニコラの側に集まり何やら相談を始めましたが、ニコラス神父が長い杖を上に上げると皆は、それぞれの乗り物に乗り込んでいきました。いよいよ出発のようです。本当に間に合うのでしょうか。
まず、トナカイとそりが金色に光り、地面からフワッと浮かびました。ほかの乗り物も次々に光り、辺りは昼間のように明るくなりました。小さな光りの粒がきらきらと噴き出し花火のように上がっています。
「いよいよ出発だね。」お兄さんが輝く光りに目を細めながらいいました。
「本当に間に合うのかしら。」妹も目を細めながらいいました。
サンタさん達の乗り物は、しだいに二人がいる窓の高さまで上がってきました。サン タクロースが乗っているそりが一番先に出発するようです。
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